イルミネーション




「ねぇ、リョーマ〜・・何ふてくされてんのよ?」
「・・・別に」

・・・12月24日。
世間ではクリスマスイヴと呼ばれるその日に、オレは生まれた。
街は当たり前のようにクリスマスムード一色。
色んなカップルが歩いてる道を、オレはと歩いていた。

「・・なら、いいんだけど・・・」

オレのいつも以上にそっけない返答に、困ったような顔をして言う
久しぶりの"デート"と言える時間に、彼氏がこんな態度だったら困るのも仕方ない。
でも・・今のオレにそれ以外の態度はとれなかった。

・・そんなオレを元気づけようとしてくれたのか、単に思ったまま口にしただけなのかはわからないが。
次にが口にした言葉は、オレのイライラを増幅させるには十分だった。

「・・・そうそう、今日はクリスマスイヴだよねv
なんかワクワクするよね〜」
「・・ワクワクなんかしない」
「え〜、なん・・・・」

の言葉が途中で止まる。
きっと・・・オレの表情のせい。

「・・・ど、どうしたのリョーマ?
あたし・・何か悪いコトいった・・・?」

不安そうな顔で言う

「・・・クリスマスイヴなんて、嫌いなんだよ」

吐き捨てるように、言う。
それを聞いたは、はっとした表情になる。

「嫌いって・・・誕生日と、一緒だから・・・?」
「・・・・・・」

無言で肯定する。
するとは、何を思ったかいきなりぷっ、と吹き出した。

「・・・何笑ってるんだよ・・」
「・・あ、いや、ゴメン。なんか可愛いなぁ〜と思ってさ♪」

女子・・・しかも同い年のヤツに「可愛い」って言われても全然嬉しくないんですけど。
まぁ、誰に言われても嬉しくないけど。
オレは、少し赤くなった顔をに見せないためにも、ぷいっとそっぽを向いた。



「・・・あたしは羨ましいけどな〜・・クリスマスイヴが誕生日なんて」

少し後になって、ぽつりとは呟いた。
オレは自然と彼女の方を向く。

「だって・・道行く人みんな幸せそうな顔してるし・・・みんなが幸せって、なんか嬉しい気持ちにならない?
それに・・・このイルミネーションなんて、街全体がリョーマの誕生日を祝福してるみたいじゃない?」

・・・微笑んでそう言うが、あまりにも可愛く見えて。
オレは、不覚にも目を見開いて見とれてしまった。

「・・・そう、かもね・・・」
「でしょでしょ?
そう思えば、リョーマってかなり幸せ者だよv」

笑みをさらに深めて言う
しかし、その一瞬後には顔を曇らせ、こう呟いた。

「・・・ゴメンね」
「・・・・・なんで謝るんだよ」
「リョーマが気にしてるってコト、気づかず一人ではしゃいじゃって・・・ゴメン」
「・・いいよ別に・・・」

そう言いかけて、ふとあることを思いつくオレ。

「・・・じゃあ、お詫び代わりにオレの言うコト1つ聞いてくれる?」
「・・・うん、いいよ!何でもいって!!」

とたんに元気な表情に戻る
そんな変わり様を見て、オレは心の中で微笑んだ。

「・・・オレの質問に一つ答えて」
「・・なんだ、そんなことでいいの?
で、質問って何?」



「・・・12月24日って、何の日?」



首をかしげて言うに、意地悪そうな笑みを浮かべてオレは問うた。
すると、彼女は目を一瞬見開き――微笑んで。



「・・・あたしの大好きな人の誕生日っ!」





――大好きな人の微笑みは。
何よりも綺麗な、イルミネーション。





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