光に憧れる者
「魔王様!魔王様!!金色の魔ロード=オブ=ナイトメア様はどちらに在られるか!」
『・・・・うるさいねえ。少しは静かに出来ないのかい?』
「申し訳ありません。今しばらく、御時間を頂けますでしょうか」
『・・・・いいよ。で?何の用だい。シャブラニグドゥよ。・・・・大体の見当は付いているがね』
「ありがとう存じます。・・・用とは例の人間の事にございます」
『やっぱりね。それで?』
「私には理解できません。申し訳ありませんが納得の行く説明をお願いしたく思います」
『理解・・・とは?』
「何故あの人間たちは禁忌とされる行為に及んだのか。あってはならないはずの婚姻。何故ですか?」
『魔族と人間・・・兄弟間の婚姻・・・・竜族と人間の事か?』
「そうです。兄弟間の婚姻は人間が勝手に定めた禁忌ですが、異族間での婚姻など前例がありません。
ましてや愛のために魔族から離れた者や人間のために自ら死んだ竜などありえなかったことです」
『どうしてあたしに聞く?』
「貴女様の所業だと確信しております」
『相変わらず勘の鋭い男だね。そうだよ。あれは全てあたしが仕向けたのさ』
「・・・何故ですか」
『・・・いけないのかい?』
「悪いとは申しておりません。そのように聞こえたのならば謝罪します」
『堅苦しい男は嫌いだよ』
「は。至りませんで」
『そういうところが堅苦しいのさ』
「教えていただけますか?」
『何故禁忌を自ら犯すものを作り上げたか・・・』
「はい」
『セイルーンとかいう国を知っているかい?』
「人間が作り上げた五紡星で有名な国家です。フィリオネルと言う者が国の中心にいましたが。それが何か?」
『そこで流行っている言葉があるらしい。「サラダボール」』
「セイルーンでは出自や人種を問わず歓迎しているようです。それを表した言葉ですね」
『お前は話が早くて助かるよ。ではその国もあの人間たちを拒否している事を知っているかい?』
「・・・いえ」
『あそこのお姫様とその親は賛成しているらしいがね。
民衆が許さないらしい。「自由」を愛する国とはよく言ったものだね』
「・・・・何をお言いになりたいのか・・・」
『あたしはリナはあの人間の男と一緒になると思っていたんだよ。
まさか魔族があれに惚れるとは夢にも思わなかったさ』
「では全ては偶然だと?」
『リナとゼロスに関しては、ね』
「何故引き離さなかったのですか?貴女様なら獣神官の記憶をなくすくらいは簡単な事でしょうに」
『・・・そんな事をしたら歴史が狂ってしまうよ。あの人間も、獣神官もこの世界を構成している歯車のひとつだ。
無理やり作った歪みはどこかで必ずひび割れを起こす。それなら放っておいた方が良いってものさ』
「・・・・なるほど。分かりました。ですがそれではその娘達についてはどう説明するおつもりですか?」
『リウナ・・・とかいったか。よっぽど強く思念伝達能力が身についたんだろうねえ。
知らず知らずのうちにゼナスの考えに同調していった。
・・・・兄弟なのに好きになってしまったと言うゼナスの心に同調したんだね』
「・・・ではあの男と竜族の娘は」
『竜族の実態がどんなものか知っているかい?』
「・・・・いえ。私共魔族とは一切の関わりを断った種族ですので」
『それが当然か。竜族はね、一切の俗世との関わりを断ち切った愚かな一族さ』
「・・・そう私たちを造ったのは貴女様です。・・・愚かですか?私には人間のほうがよほど愚かに見えますが」
『愚かだよ。イリア=フェアリアスもそう言っている。
己以外の種族の情報が限られているために己が正しいと思い込み・・・そして極端に異端を忌み嫌い、拒む・・・』
「それは愚かというのでしょうか?純粋な血の繋がりを望み、平穏な生活を望む・・・神族らしい考えだと思いますが?」
『魔王のお前からそんな言葉が聞けるなんてね。ならば聞くよ。どうしてイリアと言う娘は竜族を自ら追放されたんだい?』
「・・・・それは・・・・娘が外の世界を望んだからです」
『何故?平穏な生活なら一族から外れなければ良いのに何故わざわざ辛い道を歩むんだ?』
「・・・・・・・・・・・・・分かりかねます」
『あの娘は「自由」が欲しかったのさ。竜族の中にいる限り厳しい掟で縛られる。
だから自由に生きられる外の世界を望み、またあの男の傍にいる事を望んだんだよ』
「貴女様はそれで良いのですか?」
『何か忘れてるね。私はあれらを造った者だよ。子供が望む事を無理やり止めさせるなんて出来るはずがないだろう』
「・・・失礼しました」
『気にしてないよ。あの娘たちは死んでしまったが、あの兄弟が生き残っている限り「異端」と言われる存在は生き続けるんだろうねえ・・・。今しばらく見物させてもらうよ』
「楽しそうですね」
『楽しいねえ。・・・お前も「人間」であった時は光に憧れただろう?レゾ=シャブラニグドゥ』
「・・・ええ。すぐに滅びる羽目になるとは思いませんでしたが」
『この世に生を受けたものは例えそれが魔族であろうと神族であろうと一度は光に憧れるのさ。
あの人間たちは「光」を見つけたんだね。自分だけの光を。それが一番幸せな形というものなんだろうね』
「・・・・・私は貴女様にお仕えすることが今の一番の幸せということでしょうか」
『・・・・さあ?それはお前が決めることさ。・・・・酒に付き合いな。一人で飲むのは白ける』
「はい。頂きます」
〜〜END〜〜
■作者サマより。
一応この番外にて「魔性」シリーズ、全て終了しました。
長い間お付き合い下さってありがとうございます。
管理人様にも頭が上がりませんです(汗)
またこちらでして頂いてる企画のほうにもご参加頂ければ嬉しいです。
本当に最後まで読んで頂いてありがとうございました。
天野めぐみサマより。
素敵な作品ありがとうございました。
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