Northern Light 2


「S.O.W!!」
葉が、細い紐を取り出す。
「媒介か!?」
ミカエルの力を葉に集中させる。
「違う。媒介は――空気だよ。SOFと同じくな」
葉の瞳が、まるで闇の中の水の表面のように、暗く染まる。
「お前は邪魔だ」
「!!」
マルコが、葉の姿を捉えた瞬間、
「っ...!」
「え...」
目で追う暇もなく、マルコの体が宙に舞う。赤い血が、当たり一体を染める。
「マル...コ...?」
事態を理解しきれないのか、リゼルグがその場に硬直する。
「まずは一人――」
葉が、つぶやく。
その目は、半分笑っていた...

「うそ...違う...よね。あんなの...」
まん太が、誰に問いかけるようにつぶやく。
まん太だけではなかった。蓮も、アンナも、ホロホロも、みんな。
「信じたくないが...」
蓮が口を開く。
「間違いなく、葉だ」
その場にいたみんな、葉が何のためらいもなく人を殺したのが信じられず、身動き一つ取れないでいた。
時間(とき)が止まったような感覚に、襲われていた。
「葉...君...」
「...」
葉が、リゼルグのほうを向く。
「どう....しちゃったんだよ!!君は...人を殺すような人じゃない!!言ってたじゃないか!!
君は君!僕は僕だって!!今の君はっ!そのときの君じゃない!!ハオなんかに操られる君じゃないよっ!!」
「操ってなんかいないよ」
葉王が、唐突に、話しに入ってきた。
「葉自身の選択さ。葉は、自分から僕についてきた。その証人は――」
チラッと蓮達の方を見、
「彼らじゃないのかな?」
「......」
その二人のやり取りを、無言でみつめる葉。
「それとは別に、君は、もう巫力が無くなり掛けてるんじゃないのかい?」
メイデンを、笑いながら見る。
だが、彼女は何も言わない。
「どうせ、君が主力なんだろう?だったら、君がいなくなれば、X−LAWSは、力をなくしたことになるよね?」
ハ、っとした表情で、リゼルグがメイデンを見る。
だが、彼女は、何も言わない。...いえないのかもしれない。
――事実
確かに、彼女の巫力はつきかけている。おそらく、もう一度彼女が、ハオのオーバーソウルを食らったら、
間違いなく死ぬだろう。
それを知っていながら、ハオは彼女に問ているのである。
「SOF」
「SOWっ!」
葉と葉王が、同時に叫ぶ。
と同時に、二つのスピリットが、虚空に姿を消す。
「死んでもらおうかな」
「メイデンさまあああああぁぁぁぁぁああ!!!!!!」

血が、舞う。
会場にいた誰もが、息を呑む。

「...リゼ...」
葉が目を見開く。少し送れて、ハオが口を開く。
「...ふーん...」
ハオが、半分信じられないような顔で、今、メイデンをかばって出た相手を見る。
「リゼルグ...」
メイデンは、自分をかばった相手が目の前で倒れていく光景を、信じることができなかった。
「他人をかばって自分が死ぬ――僕には、理解できないな」

この会場の誰か、気付いていただろうか?
リゼルグが倒れたあと、葉が一人、泣いていた事に...


その後、メイデンはファイトを棄権した。
そして、X−も。
X−LAWSは全員、会場から姿を消したのであった...

「明日、か」
葉がつぶやく。
まだシャーマンファイトの終わりではない。
だが、終わりといってもいい。
そんな戦いが、明日、行なわれる。
明日で、全ての決着がつく。
「マタムネ...」

...Do you believe in destiny?

〜NEXT〜



水葉サマより。
素敵な作品ありがとうございました。



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