WINTER SONG〜my song for you〜


「そりゃ、仕方ないんだけどさぁ・・・・」
あたしは白く曇る窓の外の空を見上げ、そうこぼした。
そう、仕方ない。
分かってる。
我がままだってことも。
分かってる。
子供だってことも。
分かってる。



そう分かってるんだけど・・・・・・・・・



「でも、会いたいの!!!!!!!」
あたしは誰も聞いてないことをいい事に声を荒らげた。
グレイがかった空は今にも白い溜め息を零しそうで、不機嫌な雲がブルーを隠す。
あたしの心も曇ってて、どうしてもマイナスにしか考えが向かない。
「そりゃぁね、仕事だって言われたら、仕方ないでしょ?
そりゃ、仕方ないわよ。
遠くにいるのに今すぐ会いに来いなんて言えないよ。
でも、クリスマスくらいいいじゃないの!!!!!!
そりゃ、仕事人間、いや、魔族だって事、知らないわけないよ。
だって、そりゃ存在意義に思いっきし介入してくるし、獣王に絶対服従なのも知ってるわよ!!
でも、いつもいつも一緒にいてくれるくせに!!!!
なのに、今日だけ一緒に居てくれないの!!???
ネガティブになってくると、ゼロスが仕事で一緒にいられない事なんて時々あるくせに、すっごく辛くて、これは獣王の嫌がらせかもしれない、なんて曲がった思い込みも出て来る。
「ったく〜〜〜・・・・今日に限ってなんで別行動な訳〜〜〜・・・・・・・」
そう、今日はみんなとは別行動。
ゼル、アメリア。彼等には今日あたしが一緒にいる事は、まぁ野暮というものだろう。
なぜかガウリイもいない。
その理由は多分、この場所がサイラーで、なぜか宿の受け付けにガウリイ宛に手紙が届いていたと言う事なれば、理由は1つしかないだろう。
そして、あたしは・・・・・・・
ぼふっっっ。
音をたててベッドにうつぶせに倒れ込む。
「・・・・・寂しい・・・・・・・・・・]
ぎゅうっと大きな枕を抱き締めて呟く。
ブルーな気分は止まらない。
ゼロスに会いたい・・・・・・・・・・・・・
昼下がりの冬の曇り空は、そんなあたしを知らん顔で傍観し続けた。




「・・・・・・・あれ・・・・・・・?」
ふと目が覚めた。
どうやらあのまま眠ってしまったようである。
「寝ちゃったみたいね・・・・・っっくしゅんっ!」
羽布団をかけずに寝てしまったので、風を引いたのかもしれない。
あたしは起き上がると1つの事に気が付いた。
「うわ・・・・・白い・・・・・・・・・」
そう、白い。
真っ白。
世界そのものが白い。
すべが浄化されたかのような白。
「すごい・・・・」
あたしは思わず窓を開け放った。
舞い込んで来る刺す程に冷たい風。
あたしはそんなも気にせずしばらくぼぉっとしていた。
まだまだ空から与えられる浄化の白を見つめていたかったからかもしれない。
「あたし、間違ってないよね。」
白い吐息と共に思わず口を突いて出た言葉。
何が間違ってる??
苦笑する。
分からないのに、そんな事言うもんじゃない。
いや、もしかして、分かってるのかもしれない。
あたしの<間違ってる事>
それは・・・・・・・・・・・
「いいえ、間違ってなんて・・・・・・」
刹那に響いたよく通る美しい声。
あたしは反射的に空を仰ぐ。
「いませんよ。リナさん。」
声の方が早く届いた。
そして現れる。あいつ・・・・・・・
「ゼロス・・・・・・・・・・・」
「メリークリスマス。リナさん。今日、クリスマスじゃないですか、急いで仕事片付けちゃいましたよ。」
苦笑しながら窓からあたしの部屋に降り立つゼロス。
あたしはでも何も言えなかった。
その代わりに、溢れる涙。
「リナさん!!???」
えらく慌てた表情のゼロス。
あたしはそんなゼロスにぎゅっと抱き着いた。
「会いたかった・・・・・・」
そう言うあたしと溢れる温かな涙を抱き締めて、ゼロスはぽんぽんと頭を撫でてくれた。
「僕もですよ。もう、今まであんなに頑張って仕事したのは初めてですね。」
あたしの涙を止めようとしてくれるのだろう、ゼロスはそう言って微笑む。
もう1つ・・・・あたしは気付いて、急いでゼロスから離れた。
「ゼロス・・・・その格好・・・・・・・・・?」
今まで見た事ない、いや、多分これからも恒久的におがむことが出来ないだろうその格好にあたしは唖然とした。
さ・・・・・・サンタ・・・・・・???
いや、髭こそついてないが、まぎれもなくサンタクロースの格好である。
そう、赤と白のあの特徴的な格好である。
「あぁ、これですか?なかなか可愛いでしょう?」
ゼロスはウィンクしてそう言うと、裾の白いふわふわをつまんでみせた。
そしてあたしは・・・・・・
「・・・・・・・・・・は・・はは・・・あはははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
に、似合ってない〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!」
思わずお腹を抱えて大笑い!!!!!!
何でこいつは、んなギャグな格好をしとるんだ!!!!?????
涙はあっという間に笑い過ぎによる涙に変貌する。
「あはははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!」
うずくまってけたけたと笑い続け、お腹が苦しくなるくらいになったその時、
「やっと笑ってくれましたね。」
優しい口調が頭上から降って来る。
あたしが顔をあげると口調と同じ、優しい表情のゼロス。
・・・・・・・・もしかして、この格好、あたしのために・・・・?
「ありがと・・・・・・・ありがとゼロス・・・・・・」
あたしが立ち上がると、自然と抱き締めてくれる腕。
そして・・・・・・
『さっきの声なんですか〜〜〜〜〜〜!!!???』
ばたん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
アメリアの勢いのいい声と共にアメリアとゼルとガウリイ、そしてシルフィールが入って来る。
あたしは赤面して慌てて飛び退く。
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
一瞬凍り付く一同。
視線の先にはサンタクロース姿の赤白ゼロス。
『・・・・・・・・・あははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
やっぱり・・・・・・・・・・・
みんなうずくまって大爆笑!!!!!!!!!!!
さすがに赤白のゼロスは珍しかったのだろう。
みんな涙を浮かべて、笑ってる。
珍しいんだろうなぁ・・・・・・
確かに・・・・・・・・・
にこにこと笑みを絶やさないゼロスは、みんながなぜ笑ってるか分かってるのだろうか?
「ぜ、ゼロ・・・スさん!!!!!!!!」
涙目のまま、アメリアが途切れ途切れにそう叫んだ。
「何です?アメリアさん??」
ゼロスが座り込むアメリアを見下ろしてそう聞き返す。
アメリアは座り込んだままびしいっとゼロスを指差し、
「その格好は何なんです!!???まるで正義の味方ですよ!!??」
「あぁ、これですか、リナさんが喜んでくれるかと思って♪」
気に入ってるのか、ゼロスは嬉しそうに応える。
おいおい、その衣装着て一番喜んでるのはおまいだろ・・・・・・?
「ま、いいじゃないか。」
ガウリイがそう穏やかに言う。
「とりあえず、パーティーの準備が出来たんだ。
お前さん、呼んだんだけど、降りて来なかったから、迎えに来たんだぜ?」
「えっっ??パーティー???」
きょとんとあたしがすると、今度はゼルが咳払いをする。
「ああ、最近気の滅入る事ばっかりで、お前が不安定だったからな。」
そこまで言ってゼルはちろりとゼロスを睨む。
あ・・・・ばれてたんだ・・・あたしがゼロスが居てくれないから不機嫌だった事。
「あ、わたしが発起人ですよ!!???」
アメリアが得意げに立ち上がる。
「わたくしは、お呼ばれだけなんですけど、ケーキ、焼いてきましたよ。」
おずおずとシルフィールも言う。
「そっか・・・・・・・・・・」
あたしはみんなに囲まれ、説明出来ない温かさを感じた。
本当にあったかい・・・・・・・・・
「ありがと、ありがとみんな・・・・・・・・」
しんみりと呟いたあたしに、ガウリイがあたしの頭にぽん、と手をのせる。
「さ、食堂に降りようぜ、みんなも、ゼロスも来いよ。」
「僕もいいんですか!?」
驚くゼロスにアメリアが頷く。
「というかゼロスさんもメンバーの1人ですからね。
人と人生の素晴らしさを説いてみせます!!!!!!!」
「いえ・・・それはちょっとぉ・・・・・・・」
意気込むアメリアにゼロスがたじろぐ。
「さ、行くぞ、料理が冷める。」
ゼルが颯爽とドアを開けて廊下をすたすた歩きはじめる。
「あ、ゼルガディスさん!!待って下さいよ〜!!!!!」
アメリアが急いでゼルの後を追う。
「ガウリイ様、行きましょうか?」
シルフィールがガウリイにそう問いかけ、ガウリイが頷く。
「そうだな、リナ、行こうぜ。」
ガウリイがまぶしい笑顔をあたしに向ける。
あたしにも微笑み自然に浮かぶ
「リナさん、行きますか??」
ゼロスがそっとあたしに聞いて来る。
あたしはゼロスの手を取ると頷いた。



あたし、1人じゃないんだよね・・・・・・・・・・
みんな、大好きだよ・・・・・・・・・・・



MERRY X'MAS・・・・・・・
聖なるこの日にあなたにも幸せが訪れますように・・・・・・・



空さんより。
そらぴょん、素敵な作品ありがとうございました(*≧∀≦*)





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