光の世界
一行は街の外れに来ていた。次第に子供達の歓声が大きくなる。
それまで黙っていたアメリアが喋り始めた。
「私達が結婚した時,リナさんは身体の具合が悪かったんでしょうね,無理して式に出席されていました。それでも笑ってくださったんですけど。何かお祝いしたいけど,どうせなら皆に役立つ物をってこれを贈ってくださったんです。」
「これって何ですか?」
リウナの問いに答えたのはゼルガディス。
「あれだよ。・・・・・・あの教会だ。」
彼の指差す先には小さな教会がぽつりと佇んでいた。庭では子供達が無邪気に遊んでいた。
「・・・・お母さんがアメリア様にあげた物ってあの教会なの?」
「そうですよ。リウナさん。」
「・・・・・何か。母様らしくないと言えばらしくないですけど・・・。」
「・・・・らしいといえばらしいよな・・・・。」
「ええ。」
「・・・この教会は学校のようなこともしていてな。村の子供達にも学問を教えている。」
「貴方達が探しているものはこの教会にあるかもしれないですよ。」
教会の中からシルフィールが出てきた。
「ここの神官にはお話しておきました。どうぞご自由にお探しくださいとのことです。」
「ありがとうございます,シルフィール様。」
「それでは私達はこれで失礼しますね。まだいろいろと政務が残っておりますから。」
「ええ〜。私もここに残っていたいです。ねえ,ゼルガディスさん。」
「ああ。少しくらい良いじゃないか。シルフィール。」
ひくっとシルフィールの頬が引きつった。
「・・・・・・貴方達がいちゃついてるおかげで仕事が溜まってるんです。それを知っていながらもう少し遊びたいと仰るんですか?」
「う・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・シルフィール様怖い。」
「ゼロス父さんや兄さんが得意なやつだな。」
「ガル?何です?それは?」「はい!何でもないです!」
・・・・・こいつ,兄弟を脅してもいいと思っているのか?
「リウナ?いいですか?怒りを抑えてにっこり笑いながら静かな口調で喋るんです。そ〜すると大抵の輩は手出しをしません。」
そんなことを教えるなって。
「ふ〜ん・・・・。」
納得するんじゃない。
「じゃ,じゃあ私達はこれで失礼します。ゼナスさん達,ゆっくりしていってください。」
・・・・アメリア,お仕事の山とシルフィールの怒りの笑顔に負けたな。
国王様と女王様は慈愛の笑みを浮かべた鬼の巫女頭様に城に引き立てられていった。
「・・・・しかし探すって言ってもどこを探せばいいんだよ?」
それはそうだ。小さな教会とは言え,それでも聖都,セイルーンの教会だけあってその広さは半端ではない。
それにしてもよくリナにこれほどの物を建てる財があったものだ。・・・・盗賊いぢめしてるから当然か・・・。
「まあ,母様が隠しそうな所を一つずつしらみつぶしにするしかないでしょうね。・・・・・・母様がこんなことをするとはね。意外にも程がありますよ。」
「ホントになあ。」
リウナが食ってかかった。
「お母さんはすごく優しかったもん!意外でも何でもないよ!!」
二人は顔を見合わせると大きな溜め息をついた。
「リウナには本当に甘かったですからねえ。母様は。」
「お前は母さんが本気で怒ったところを見たことがないから言えるんだよ。」
言いながら二人は想像して大きく身震いした。
「僕がファイヤー・ボールを間違って当ててしまって台所を焦がしてしまった時の母様の怒った顔と言ったら・・・・。」
「俺が剣の練習をしていて,ガウリイ父さんに上手いって誉められたんで調子に乗って炭焼き小屋を粉々にしたときの母さんの怒った顔と言ったら・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・お母さんが怒るのも無理ないよ?それ・・・・。」
う〜ん・・・・10人中8人位は怒るだろうなあ・・・。だが,二人は反論した。
「そんな事はないです。あれくらいで怒るなんて母様は細かいです。現にゼロス父様は間違えて家のど真ん中でメガ・ブランドを使っていました。母様が音を聞きつけてくる前に力で元通りにしていましたが。」
「そうだ。ガウリイ父さんは大黒柱を間違えて斬ってしまった事があるぞ。ゼロス父さんと結託して母さんにはばれなかったみたいだけどな。」
「・・・・それって比べるのがそもそもの間違いだよ?きっと。」
・・・・・・リナの冷静な判断力と言うのはきっとリウナが根こそぎ持っているんだろうな。
しかしどうやったら家の中で間違えてメガ・ブランドを使ったり大黒柱を斬ることができるんだろう。
「ま、まあそれはそれとしてです。」
わざとらしくゼナスが話題を変えた。
「メモリー・オーブはどこにあるんでしょうねえ。」
教会の各小部屋を探したがそれらしいものはなかった。後残るはこの大聖堂だけなのだが・・・。
やはりそこにもそれらしいものはなかった。だがその時。
「ねえ。お兄ちゃん。」
「何ですか?リウナ」
「あそこ。何かある。」
そう言って彼女は聖壇の上に掲げられている十字架を指したが、二人の兄には分からなかった。
「何もないぞ?リウナ。」
「ちょっと行ってみる!」
そう言ってリウナは十字架の下まで走ってきたが、十字架を調べることが出来ない。
「ゼナスお兄ちゃん!」
「はい。しっかり掴まっていてくださいね。」
その言葉にリウナはいつのまにか傍まで来ていたゼナスのマントの裾をしっかりと握り締めた。
「レビテーション!」
二人は宙に浮かぶとゆっくりと十字架に近づいた。
「・・・・ふむ。どうやら何もなさそうですけどねえ?リウナ?」
リウナは何かに操られるかのように十字架に二つの指輪を向けると十字架のクロスされている部分にはめ込まれた紅い宝石にそっと押し当てた。
―――ポウ・・・・。
指輪と赤の宝石がお互いに光を放ち、宝石の中から綺麗に装飾を施された小さな小箱が出てきた。
「これは・・・・。」
ゼナスが驚きを隠し切れずに呟いた途端光は途絶え、元の静寂が訪れた。
「それが母様が遺したものですか。」
「何が入ってるんだ?」
「さあ・・・?」
三人は家に戻ると居間のテーブルを囲んだ。もちろん真ん中にはリナの遺した小さな小箱。
「まあ、いつまでも眺めていても仕方ありませんし。リウナ、開けてみて下さい。」
「分かった。・・・・・・じゃあ、開けるよ。」
ごくり。皆が緊張に息を呑んだ。
そして箱の蓋が開く。その中には・・・。
・・・・・続。
作者サマより。
あああ・・・・すみません。皆さんには本当にご迷惑な・・・(汗)
まだ続くのですわ・・・・。いい加減に終われって感じです・・・(自分で言うな)
こんな駄文を好きだと言って下さる皆様には本当に感謝ですわ。
結構私が勝手に決めた設定とかが入っていますので、皆様はとても不思議に思われるでしょうね・・・。
白魔法の結界程度で魔王の復活が阻止できるものなのか?とか。
でもこれはパラレルですので(そういう問題じゃない)無視して読んで頂けたら嬉しいです。
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