光の世界


その日からリウナは部屋に閉じこもりっきりで決して出て来ようとはしなかった。そして何も口にすることはなかった。今リウナを支えているのはわずかな生命力と水だけ。

ガルは剣の稽古に勤しんでいた。悲しい出来事を一刻も早く笑って話せるようになるために。どんなに汗を流しても涙が枯れることはなかったが。

ゼナスは両親の部屋を綺麗に掃除し,魔道書を読み漁る毎日だった。

ゼナスは魔族を選ばず人間を選んだ。ガルは近衛隊に入るための推薦状を焼き尽くした。

リウナが心配で二人ともそんなことは出来なかった。あるいはリナはそれを知っていて,二人への手紙にあんなことを書いたのかもしれない。

リナとガウリイとゼロスは小高い丘に埋葬した。リナは遺体があったのだが、二人の夫には何も無かった。だから墓石だけでもと置いた。そして近くには石碑を建てた。「光の世界」をいつも夢見ていた母親のために。

そんなある日。

「ガル。リウナはまだ出てこないんですか?」

「ああ。もう一週間になる。あいつの体力もそろそろ限界だぞ。どうする?」

「・・・・・・母様は僕達にメモリーオーブを遺したと言っていました。それがあればリウナも少しは元気になるでしょう。せめてそれがどこにあるのかが分かれば・・・。」

二人は難しい顔をして黙り込んだ。

「アメリア様にも早く母様達のことを報告したいのですが・・・。リウナがあれではとてもそんなことは出来ませんし・・・。」

「兄さんが空間を渡ってリウナを連れ出すというのはどうだ?」

ゼナスが首を振る。

「既にやりました。三回も。リウナに叩き出されましたがね。」

「どうして。兄さんなら今のリウナじゃ歯が立たないだろ?」

「貴方忘れてません?リウナは母様にそっくりです。あの顔とあの声で「入って来るんじゃない!」って言われて,貴方・・・入れます?」

げっそりした顔で答える。

「・・・・・・・・・・・・・・・絶対無理。」

「でしょう?となるとここはやはり・・・。」

「ああ。メモリーオーブを探し出すしかなさそうだな。」

「ええ。」

ということで,二人はリナの部屋に来ていた。

「ところで・・・。」

「メモリーオーブって何だ?・・・って言うんじゃないでしょうね。」

「うん。言う。」

がすっっ!

「貴方はガウリイ父様ですか!」

「まあ冗談はこれくらいにして・・・。母さんはどこに隠したんだ?」

メモリーオーブ。小さな宝玉に魔法でありとあらゆる知識,情報を封じ込めることが出来る物で,当然映像も保存できる。半永久的に存在し得る物で持つべき者にしか反応しないと言う物でもある。

「・・・・・・・・リウナを連れてきた方が早いんじゃないか?」

にっこり。

「ガル?それが出来ないから僕達がここにいるんですよ?」

「そうでした。」

しばらくの間そんな事を言いながら小さな宝玉を探していた二人だが,ゼナスがふと呟いた。

「・・・ガル。」

「何だ?兄さん。」

「僕達魔道師は大事な物を隠す時に”鍵”を使います。」

「ああ。母さんはヘソクリを”鍵”を使って隠していた。」

「母様が使っていた”鍵”は父様達から貰ったペンダントでした。」

「・・・・ということはつまり・・・?」

「メモリーオーブも”鍵”を使って隠したのではないでしょうか?」

「問題はその鍵が何か・・・。」

「あの時。父様達が滅びた時に何故あの指輪が残されたのか・・・?それを考えると自ずと答えは出てきます。」

「自分の大切にしていた人達の物を使って自分の娘に何かを託す・・・。母さんらしいな。」

「本当に母様には勝てませんよ。」

「ああ。俺達が気付くのも見越してたって事だからな。」

「ですが,やはり最後の”鍵”はリウナでしょう。」

「・・・だな。だがあいつが出て来るとは思わないぞ?」

「出て来ないものはしょうがないです。引っ張り出すしかないですね。」

「リウナに怒鳴られる役は兄さんに譲るよ。」

「いいえ。ガルに譲りますよ。」

・・・・・・・・・・・・・・。

にっこり。二人はにこにこしながら言っているが,静かに火花を散らせていた。妹に怒られる役をお互いに押し付ける。・・・なんて不毛な。情けないの極みである。


すみません…続きます。


 作者サマより。
「魔性の瞳」続編、「光の世界」です。一応完結はしています。今回のテーマは「それぞれの結末」かな…。
子供達の名前が中々決まらずに安直に「よし!」って言ったのを覚えています(おい)
この子供達,実はとんでもないバケモノのような子供達です。あの方達の子供なら分からない気もしなくもないですが…。
まあ、それは番外編で明らかになることでしょう。(実は番外編が3つあったりします)
これからこの子達はどうなってしまうのでしょう…。ヒントは「花」と「宝石」です。
このごろ「探偵学園Q」にはまっているめぐみでした。



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