光の世界
『全く!・・・・・はあい♪皆元気にしてた?』
「お母さん!何でそこにいるの!?」
『久しぶりね,リウナ。ここは・・・・。』
『ここは混沌。あたしが管理している場所だよ。』
どげしっ!
『だから,でしゃばるんじゃない!』
「・・・・金色の魔王を殴った・・・・。」
「さすが母さん・・・・・・・。」
こらこら。感心するところが違うのではないか?
『全く。いいよ,お邪魔虫は消えてやるよ。』
リナはLの気配が完全になくなったのを確かめると,口を開いた。
『ここは混沌。貴方達のいる所には行けないから,あいつに頼んで繋ぎをつけてもらったのよ。』
『あれは脅したと言いませんか?ガウリイさん?』『俺も脅しにしか聞こえなかったぞ?』
リナとLの間で一体どんなやり取りがなされたのだろうか。
『・・・・・何か言った?』
『いいえ!何も言ってません!』
こいつらの上下関係は混沌でも変わっていないようである。
『リウナが奴の意識に呑み込まれそうだったから慌てていたんだけど・・・。?リウナ?』
リウナは泣いていた。
「お母さんが死んだのってあたしせいなんでしょ?あたしの代わりにお母さんが病気になったから・・・・。」
「ずっとこの調子なんですよ。母様,何か言ってやってください。」
『・・・・リウナ。』
ガウリイとゼロスは来る!と思った。天使のような微笑をリナが浮かべていたので。
『馬鹿。』
「お母さん・・・?」
『あんた本当に馬鹿?あたしがしたい事して,その挙句にあたしが死んで,それで何であんたのせいになるの?あたしの好きにやった事にあんたが責任を感じる必要性はどこにもないわ。あんたの悪いところは何でも自分のせいだと思うことね。その性格何とかならない?もともとあたしは手紙の中に何を書いた?強くなれって書いたはずよね?精神的に強くなれって。それなのにガウリイ達が滅びた途端シャブラニグドゥに乗っ取られそうになるなんて。本当に情けないったら。人が死んだ事位でうじうじしないの。そんなに悲劇のヒロインになりたいわけ?人間いつかは必ず死ぬのよ?しかも親ならあんたより長く生きてる分だけ早く死ぬのは当たり前なの。死なない人間なんて人間じゃないわ。それはもう魔族か何かね。折角メモリーオーブやら何やら遺してあげたのにそれも探さないなんてお母さん悲しいわ。あ,それとも要らないの?ならさっさと壊しておきなさいって言ったらどうせ困るんでしょう?いい加減にしっかりしないと,あんたの父さん達の命が幾つあっても足りなくなるわよ?』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・すごい。
もうすごいの一言に尽きる。よくもこれだけの言葉を一息に言えるものである。
しかし,リウナがしっかりしないとガウリイ達の命が幾つあっても足りなくなくなると言うのは・・・・?
「・・・やっぱり母さんだ。」
「・・・ええ。どう足掻いても母様に勝てる日は来ないでしょうねえ。」
『リナさんリナさん。何故僕達の命が足りなくなるんですか?』
『だって,ここって近くに手頃な盗賊とかいないんだもん。』
どうやらリナは「しっかりしないと,こいつらがあたしのストレス発散道具になる」と言っているようだ。なんて無茶苦茶な。
「・・・・・・混沌に盗賊がいたら怖いですよ・・・・。」
『ゼナスう。僕達の身の安全のほうは何も言ってくれないんですかあ?』
「俺達も母さんが怖いんだ。悪いな,ゼロス父さん。」
『しくしく。ガルまで・・・・。』
言いたいことを言ってすっきりしたのかリナの表情はどこまでも晴れやかである。
対称的にリウナの表情はどこまでも暗いままだ。しかし同じ顔でここまで対称的な表情をされると圧巻である。
「でも・・・・。あたしまだ何も教えてもらってない・・・。」
「デモもストもない!ってここには仕事がないんだから当たり前よね。あんたには何も教えなかったんじゃなくて,教えてあげることが出来なかったの!大体,あんたが物心ついた時ってあたしはとっくに家から一歩も出られない状態だったのよ?唯一の例外はゼロス達に抱いてってもらったハイキングの時だけよ!・・・まさか家の中でファイアー・ボールとかダム・ブラスとかを教えて欲しかったの?それはあたし達の寝るところがなくなるからパスしたいんだけど。だからあたしはメモリーオーブを遺したんだって言ったでしょう?いつまでも落ち込んでても仕方ないでしょう。そろそろ前を見てもいいんじゃないの?」
「・・・・・分かった。お母さん,心配かけてごめんなさい。」
やはりリナはリナだ。しかし家の中でファイアー・ボールって一体・・・・・。
『心配だったから出てきちゃったけど,あんた達がいるんだから大丈夫ね。・・・帰りますか。』
『ああ。』『そうですね。』
「母様。ひとつ質問してもいいですか?」
『いいわよ。ゼナス。何が聞きたいの?』
「何で母さんは父さん達と一緒になったんだ?」
「・・・僕が聞きたかったのに・・・。僕と同じ質問なんて・・・。」
『・・・・何でそんな事を聞くんですか?ゼナス?』
『・・・・何でそんな事を聞くんだ?ガル?』
「いえ,こんな腐れ魔族と一緒になるなんてこの男の何がそんなに良かったのかと。」
「いや,こんなくらげ頭で顔と剣にしかとりえのないような男の何が良かったのかなと。」
『・・・・・・・・・・・・・・・ひどい。』
自分の父親に随分な言い草である。リナは随分と不機嫌な表情をしていた。
『あたしの趣味がどんなに悪かろうとあんた達には関係ないと思うけど?』
「お母さんもかなりひどい事言ってるような気がするけど・・・。」
・・・リウナが正しい。
『そうねえ・・・・・。ゼロス?あんたならこんな時何て言うかしら?』
いきなり話を振られたゼロスは,しかし,意味深なリナの笑みににやっと笑う。
『やっぱり・・・・「分からない」って言うでしょうねえ。』
「何で分からないの?ゼロスお父さん。」
『だってね?リウナ?例えばリウナはお母さんのどこが好き?』
「えっと、えっと・・・・分からない。」
『どうして分からないんですか?リウナ。』
「好きなところ一杯あるから。」
『あたしが二人と一緒になったのも同じ理由かしらね。』
テレながら言ったリナの言葉にガウリイとゼロスは感動に震えていた。
『リナさんっっ!!』『リナっっ!!』
ぎゅうっ!左右から二人に抱きつかれてリナは変な声をあげた。
『うきゃっっ!』
『僕もリナさんのこと好きですううっっ!』『俺もリナのこと好きだああっっ!』
『ちょっと!皆が見てるって!ガウ!ゼロス!やめなさい!』
どたばたコメディを見ながらぼんやりとガルが呟く。
「・・・・・・・・・・・・・・・なあ。」
「・・・・・何ですか?ガル?」
「あれ・・・・・いつになったら終わるんだ?」
「さあ。それにしてもいつものこととは言え,子供の前でよくいちゃいちゃ出来ますよね。」
・・・いつものことなのか?
「本当に。・・・・二人とも,そろそろ気が済んだか?」
『まだです♪』『もうちょっと待ってろ♪』
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