光の世界


『ちょっ!リウナ!』

「は〜い♪」

リナの呼びかけにリウナは息を吸い込む。

「いい加減にしなさい!!また吹き飛ばされたいの!?」

『ごめんなさいいいっっ!』

二人が怯んだ隙にリナは逃げ出す。

『・・・ふう。ありがと,リウナ。助かったわ。』

「ううん。あのね,お母さんの思うお父さん達のいいところって?」

『・・・・・うっっ!?』

不意打ちにリナが怯む。思わぬ伏兵が潜んでたものだ。と思っているようだが,それは違う。

『リナさん,リウナが知りたがっていますから♪』

『そうそう,別に俺達が知りたいんじゃなくて,リウナが知りたがってるんだから。ここは答えてやらないと♪』

魂胆が見え見え。それにしてもこいつら,何年経っても成長と言うものを知らないようだ。

『・・・・・いや,よく考えたら,本当ゼナスとガルの言うとおりだなって思って。』

『は?』

『そうよね。こんな腐れ魔族とくらげ頭のどこが良かったのかしら?』

『リナさんひどい・・・・・。』『何もそこまで言わなくても・・・。』

「どこが良かったんですか?」

『う〜ん・・・。分からない。ま,それはそこ。人類の神秘とゆ〜奴で♪』

「そういうもんか?」

『そういうものそういうもの♪そういうことにしとかないと・・・・分かってるわね♪』

こくこくこく。息子たちは一も二もなく頷いた。

・・・・・知るまい。リナがただ単に『そんなの恥ずかしいから言わない!』と思ったなどと。

『まあ,それはともかく。』

リナの隣にはふざけすぎた罰として,頭をハリセンで殴られたゼロスとガウリイが立っている。

『あたし達はもう帰る。もう聞きたいこともないようだしね。』

本当はもっといろいろ聞きたいことがあったのだが,リナの隣の二人が,『僕達は早くリナさんといちゃいちゃしたいんです♪』『早く帰れ♪』という恨みがましい視線を送っていたので,早々に引き上げることにしたのだ。

「じゃ,じゃあ母様。僕達はこれで失礼します。」

『ええ。それじゃあね。もう会うこともないでしょうね。死んでるんだから当たり前だけど。』

『もうお別れですか。残念ですねえ♪』『うんうん。本当に残念だなあ♪』

「よく言うよ・・・。」

ガルのこっそりした呟きはリナ達の耳には入らなかったようだ。



そして,現実の空間に戻ってきた三人は一路セイルーン王国を目指した。

聖王国セイルーン。五芒星をかたどった大通りで街が区分けされた大きな国である。

いつものように城に行くと若い門番が二人立っていた。まだ新人だろう。

「待て。お前達城に何用か?」

「僕達シルフィール様に用事があるんですが。」

リナの友人であるシルフィールは現在城で巫女頭を勤めている。また,巫女の教育係をしていた。

「お前達のような者にシルフィール様がお会いになるものか。さあ,帰った帰った。」

・・・・・・・・何故こういう役と言うのはお決まりの言葉しか言わないのだろう。

「お母さんの用事で来たの。通して。」

こう言った場合,次に言う言葉は・・・・・・。

「駄目駄目!ここは通さないからな!」

・・・・・・・やっぱり。

「リウナ。こういう人は決まった言葉しか言わないものですよ。」

「じゃあ,どうするんだ?いつもはシルフィール様のほうから家に来てたからなあ。それに俺達もともと城に来るのって初めてだぞ?」

にこにこ。ゼロス譲りのこの笑みは何か企んでいる時の笑みだ。

「こうします。」

言った途端門番達が崩れ落ちた。耳を澄ませば微かな寝息が聞こえる。・・・・・・スリーピング。

だがそんなことをして良いと思ってるのか?

「思い出すよなあ。俺達がぐずってなかなか寝ないと母さんこれで無理やり寝かせてたっけ。」

・・・・・・・・・・・・・・・おい。

「ええ。一度は僕と父様達が母様と寝るって駄々をこねた途端これを使われました。目が覚めると、ちゃんと皆で寝てましたけどね。」

「あたしそんなの使われたことないよ?」

「母様はリウナには弱かったですからね。」

「そうそう。」

そんなことを話しながら三人は巫女の詰め所を人に尋ねつつ目指す。

「・・・ここが巫女の詰め所ですね。」

「どうやってシルフィール様にお会いするかが問題だよな。」

「あたし行って来る!お兄ちゃん達はここで待ってて!」

「ちょっと待ってください!僕達も行きます!」

「・・・・・・・巫女の詰め所は一応男子禁制だよ?それでも入るの?女装でもする気?」

「うっ・・・・・。」

「兄さん。兄さんの負けだ。」

「分かりました。僕達はここで待ってます。」

だが,どうやってシルフィールに会う気だろうか。見ているとリウナは堂々と詰め所のドアを叩いた。

「すみませ〜ん!」

「はい,何か?」

「あたし,こちらにシルフィール様がいらっしゃるってお聞きして,北から出て来たんです!一目でいいから会わせてくださいませんか!?ずっと憧れてたんです!」

「あの・・・・。後ろの方たちは?僧侶様と剣士様のようですが・・・?」

「お兄ちゃん達です!あたしが心配だからってわざわざついてきてくれたんです!」

・・・・・・・なるほど。役者である。しかしリウナは嘘はついていない。確かにリウナ達の家はここから北にある。距離にして約500m。

「まあ,それはそれは。ようこそお越しくださいました。こちらで少しお待ちください。今お呼びしてきます。お兄様方もこちらでどうぞ。」

・・・・お見事。Vサインを送るリウナに二人は拍手した。



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