光の世界
数分して,先程のシスターと女の話し声が近づいてきた。シルフィールの声である。
「お待たせしました。シルフィール様を呼んで参りましたよ。では私はこれで。」
「ありがとうございました〜!!」
白い法衣を纏った長い黒髪の女性が現れた。
「貴女ですか?私に会いたいと仰ってくださったのは・・・。」
そう言った女性に返事をしたのはゼナスだった。
「お久しぶりです。シルフィール様。」
「まあ。どなたかと思ったらゼナスさんじゃありませんか。どうなさいましたの?もしや女性になりすまし詰め所に入るおつもりでしたの?」
「・・・・変態じゃないんですから。僕は・・・・。」
「シルフィール様!お久しぶりです!」
「リウナさん。ガルさんまで・・・。どうなさいました?リナさんのお使いでいらしたんですの?」
三人の顔に曇りが浮かぶ。
「・・・・その事でお話があってきたんです。ぜひ陛下にお取次ぎを。」
「何かあったのですか?」
「はい。母さんと父さん達に言われてここに来ました。」
「リナさん達に・・・?」
「ええ。」
「・・・ここでは駄目なのですか?」
「何分,人目を憚る話。それに母様は言いました。アメリア様に会うようにと。お願いします。陛下にお取次ぎを。」
「・・・分かりました。こちらにおいでなさい。」
一行はシルフィールに連れられて長い廊下を歩く。
ある一室の前で彼女は立ち止まり戸を叩く。
「失礼します。陛下。」
扉を開けるとそこにはアメリアとゼルガディスがいた。・・・・・正確には部屋のど真ん中でいちゃついていた。周りにいる衛兵は困り顔である。
「シルフィールさん。どうかしたんですか?」
「・・・いちゃつくのはよろしいですけど?もう少し人目を憚ってくださいません?」
「悪い。それで何か用か?」
「・・・・用があるから来たんですよ。陛下にお客様がお見えです。」
「お久しぶりです。ゼルガディス様,アメリア様。」
「ゼナスさん?ガルさん,リウナさん?久しぶりですねえ。どうしたんですか?あなた達がここに来るのは初めてですよね?」
「はい。アメリア様。ゼルガディス様,また剣の稽古をつけて頂きたく思います。」
「あ、あたしもあたしも!あたしにも剣を教えてください!アメリア様にも白魔術を教わりたいです!」
おいおい,用があったんじゃなかったのか?
「・・・この二人のことはほっといてください。今日はお二人にお話があって参りました。」
「?何ですか?」
「シルフィール様以外,お人払いを。」
「俺達に告白でもするつもりか?」
ゼルガディスが言っているのは,告白するくらいに人に聞かれては困る話か?と言うこと。ゼナスもそれを知っている。
「・・・・・御意。」
「・・・・分かりました。皆下がりなさい。」
アメリアは数年の後にゼルガディスと結婚し,女王として即位した。ゼルガディスは度々城を抜け,旅に出ていた。まだ彼の体は人間には戻っていない。しかし民は心優しい二人を歓迎した。彼らが後望むのは健やかな世継ぎだけ。
人気がすっかりなくなると,彼らは椅子に座ってお茶を飲みだした。気分を落ち着けるために。
「・・・それで,お話とは何ですか?」
「母様に言われて黙っていましたが・・・・・・・母様と父様達は一月ほど前に死にました。」
「なっっ!!」
驚く三人に子供達は事のあらましを説明した。
「・・・・・・と言うわけです。」
「・・・・・そうですか・・・。」
「アメリア様。母様から何か預かられていませんか?母様が最後に言ったセイルーンに来れば何か分かると思ってきたのですが・・・・。」
「リナさんからですか?こういっちゃ何ですけど,リナさんってお腹が一杯になってもお菓子を手放さなかったような人なんですよね。私がいくら欲しいって言っても粉屑もくれなかったんですよ。リナさんが人に預けるって言ったら食事代と事件の責任くらいですかねえ。」
・・・・・大分な言われようである。しかしリナってそんなことをしてたのか。
「・・・アメリア。どこかからリナのスリッパが飛んできても知らんぞ。」
「あああ!?すみませんでした!また城に来てタダ飯食べても怒りませんから許してください!!」
いや、それはどうかと思うぞ?
「アメリアさん?またそんなことを言って。後悔しても知りませんよ?」
「僕の知ってる限り,通算三百六十五回は後悔してらっしゃいましたよねえ。」
三百六十五回?ゼナスの生まれた頃からだから・・・一月につき一回以上は後悔していたと言うこと?・・・・・懲りない人だなあ。
「・・・・まあ、それはともかく。何か預かられていらっしゃらないでしょうか?」
「そうですねえ・・・。あ!預かった物はないんですけど結婚祝いにって頂いた物ならあります!」
「・・・・・見せていただいてよろしいですか?」
「いいですよ。じゃあ行きましょうか。」
「では私はあちらにご連絡しておきますね。」
「はい。お願いします。」
どこに行くのだろうか。
「あの,アメリア様?行くってどこに行くんですか?」
「ついて来れば分かりますよ。ね,ゼルガディスさん。」
「ああ。」
「お母さんがアメリア様にあげた物ってここにないんですか?」
「こんな狭いところには持って来れません。って言うか不可能ですね。」
「おいおい。あんなもの持って来ようがないぞ?」
ますます分からない。リナがアメリア達に贈ったものとは何だろうか?
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