最遊記&ちな外伝 『タイムスリップ』


◇第六話◇

(三蔵さん達・・・大丈夫かなぁ・・・?)
暗い、まるでどこかの奥山のトンネルのような部屋。
敵の基地らしきところで捕われているあたしは、両手両足が柱にくくられているのを
なんとかはずそうともそもそ動きながら
なんとなくそんなことを考える。
偽悟空さん=妖怪はあたしを置いて三蔵さん達にあたしの今の状況を伝えるため、ここから出ていった。
わたしがいないこと・・・知ってるかなぁ?
よく考えれば、あの時。偽悟空さんが現れた時、本物の悟空さんや三蔵さん達は一体
どこで何を?
凄腕を持っているあの人達がこの妖怪に気付かなかったの?
ひょっとして・・・あたしが捕まるのを知ってて置いて行っちゃったのかな?
不安がよぎる・・・。
あたしがここに来て初めて一人になった時間・・・。
この3日間、ずっと悟空さんや三蔵さん、悟浄さん、八戒さんが傍にいてくれた・・・。
すごく、心強い人達だった。
それぞれすごく個性的で楽しい人達で・・・一緒にいると安心できた。
いつか絶対元の世界に帰れる気がしてた。
でも・・・もし三蔵さん達が・・・このままあたしを置き去りに旅をしてしまったら
・・・2度と元の世界に帰れない気がする・・・。
嫌だ・・・帰りたい・・・。助けてほしい・・・。
妖怪に殺されたくなんかない!あたしはもともとこの世界の人間じゃないのに!!
お願い!!もう帰らせて!!
ばん!!!!
あたしが涙を流しそうになったとき、後ろの今にも崩れて壊れそうなドアが大きな音を立てて開く。
思わず振り向くあたし。
三蔵さん達がいる。多分『おとなしくついて来い。』とか言われたんだと思う、妖怪達に囲まれている。
いつの間に、こんなに仲間を呼んだんだろう。
「そこへ立て。」とあたしを指差しながら三蔵さん達に命令する。
おとなしく近づいてくる三蔵さんや悟空さん・・・。続いて八戒さん、悟浄さん・・・。
あたしは言葉すらなくしてる。あたしのために・・・三蔵さんたちは・・・。
「ふん、三蔵と言うからどれだけすごい奴かと思えば。名前だけのよわっちぃ人間だな。」
妖怪があざ笑う。
「こいつらどおする?」
「三蔵の肉は不老不死らしーから私がもらうわ。」
「何言ってんだお前!!ここは全員平等にだな・・・」
「なによ?!」
妖怪達の口論が始まる・・・。
(なんにせよ・・・あたし達は食べられてしまうんだ・・・。)
あたしに絶望感が生まれる。
「なぁ、ちな大丈夫か?」
あたしの方に目をおろしながら優しく話し掛けてくれる悟空さん。
「どこか・・・怪我などしていませんか?」
心配そうに八戒さんも言ってくれる。
「あ、はい・・・。」
(こんな時まで・・・あたしの心配を・・・?)
「ならもう準備OK?なぁ三蔵。」
「・・・そうだな。」
・・・へ?あたしはきょとんとした顔をした。
じゅ、準備?これから何かするの?あたしや三蔵さんたちはもう敵の手の内なのに?
「おい、クズ。お芝居もここまでだ。」
(さ、三蔵さん!!?な、何妖怪さんたちを挑発してるんですか!?)
あたしの気持ちを察したのか八戒さんがあたしに言ってくれた。
「大丈夫ですよちなさん。はめられているのは僕達ではなく妖怪なんですから。」
そ、そんな爽やかに微笑れても何がなんだか・・・。
とにかく、大丈夫らしい・・・。
「お芝居だぁ?ふざけんな!今どっちが危機にサラされてるのか分かってんのかぁ?」
「ああ。貴様らクズだってことだろ。」
「な!?ほざいたこと言ってんじゃねぇ!!」
妖怪の一人が襲いかかってきた!駄目だ!?やられる---?!
思わず目を閉じ覚悟を決めたあたし。
・・・?いたくないっと言うか・・・誰も・・・怪我をしていない・・・?
まさか・・・!?
あたしの頭上には思ったとおり、八戒さんの気孔術が炸裂(?)していた。
つまり攻撃をカバーしていたくれたわけで・・・バリアみたいなものを・・・。
「大丈夫だって言ったでしょう?」
あたしにいつもと変わらぬ笑顔と、確信を持った言葉をかけてくれた。
やっぱり・・・爽やかでカッコイイし声優さん同じだし・・・○○○くんみたいです・・・八戒さん・・・(笑)
「ぬぁ・・・こいつ〜・・・くたばれぇ!!」
妖怪の気孔を押す力にも負けず気孔術したまま三蔵さんに話しかける。
「三蔵、そろそろ経文を。」
「ああ分かってるよ。」
そおいうと三蔵さんは何かを唱えだした。
ああ・・・これ魔天界経文の詠唱なんだっけ・・・悟空さんから聞いた事ある。
でも見るのは初めて・・・。
肩にかけてある経文が光出して・・・だんだん広がっていく・・・。そして
「魔界天上!!!!」
経文が妖怪達を襲っている、この光りに浄化されているみたいに次々と消えて行く妖怪。
あたしはただ・・・その事実を受け止めるしかなかった。



NEXT